投資に有用な情報とは(とある会計士の雑感)

もうすぐクリスマスですね🎅

今のところ特に予定は無いのですが、どう過ごしましょう。

ここ数年お付き合いしてる人もいなく、孤独なクリスマスには慣れているのですが、昨年は某百貨店でちょっとお高いクリスマスケーキを予約購入し、イブに独りで食べました。

今年はケーキの予約をしなかったので、当日どこかでケーキでも買おうかな~

 

一緒に食べてくれる人、どなたかいっらしゃいませんか?

 

さて、日産のゴーン事件で一躍脚光を浴びた有価証券報告書(以下有報)についてです。

 

有報は基本的に上場している会社が作成するものですが(上場していなくても作成しなければいけない場合もあります)、これは株主には直接は配布されません。

閲覧したい場合は金融庁EDINETもしくは、その会社のHP等で開示されます。

ちなみに、株主には株主総会前に招集通知とともに「事業報告」なるものが送付されます。

 

大雑把に言うと、事業報告は株主に対してのその1年間の会社の業績報告及び株主総会での決議議案の賛否判断資料という意味合いがあり、有報はもちろん業績報告という意味合いはあるものの、今後投資しようとする人向けの報告書といえます。なお、短信も有報と同じと考えてよいでしょう。

 

自分もかなり前から株式投資をやっているのですが、実は長い間、その会社の有報を見ることなく株を買っていました。

会計士になってからはさすがに株を買う前に少しは有報を見るようになりましたが、それでも有報の隅から隅まで見ることはありませんでした。

 

皆さん有報のどこを見て投資す判断をしているのでしょう?

会計士の自分が言うのもあれですが、有報のどこを見てるんですかね?

 

ちなみにですが、自分は以下の観点で判断しています。

①今後業績が伸びるか

→有報でチェックする情報:売上・利益の五期比較(主要な経営指標の推移)、当期のP/L・B/S

②世の中の流れ(新聞やTV、ネットの情報・評判)

株主優待があるか

 

①のとおり、有報の情報は隅々までチェックしているわけではありません。

もちろん、それぞれの投資スタイルによって有報の利用状況は変わってきます。

ファンダメンタルズ分析を行う方は、有報の色々な情報を使っているのだと思います。

特に機関投資家はP/L・B/S以外にも注記情報を細かくチェックしているのかもしれません。

 

でも、個人の一般投資家はそんなに有報の情報を使ってないんじゃないですかね。

今回のゴーン事件で問題になった役員報酬の情報ですが、ゴーン氏の報酬が高い・低いによって投資するかどうか判断する人ってあまりいないと思うんですよね。

もちろん虚偽記載はだめですよ、決められたことはちゃんと有報に記載しなければいけません。

でも、ゴーン氏の報酬が例えば年間億20円として、ゴーン氏の報酬が高い!だから俺は日産株は買わないもしくは売ってやる! な~んて人は少数だと思うんですよ。

そりゃ株主が文句を言う情報にはなります。でも役員の報酬の多寡が株の売り買いにつながるかは疑問です。

 

P/L・B/Sについて注記情報というものがあります。

P/L・B/Sの数値を補足する情報ですが、この情報も投資の判断に資する情報となっているのかどうか・・・

自分が上場会社の会計監査を担当していたとき、期末監査の時は毎年、この注記って誰が見るんだろう?と思いながらチェックをしていました。

 

例えば、税効果会計の注記で税率差異の情報を記載する場合があります。

※「法定実効税率税効果会計適用後の法人税等の負担率との間に重要な差異があるときの、当該差異の原因となった主な項目別の内訳」のことです

重要性がなければ記載する必要はありませんが、この情報を投資家が見てどう利用するんだろうと思っていました。これを理解するには間違いなく会計の知識、それもそれなりに高度な知識が必要です。

 

「おいおい、交際費等永久に損金に算入されない項目の割合がデカすぎるよ、こりゃこの会社の株買うのやーめよ」

って言う人がどれだけいるのでしょうか?

そもそも「交際費等永久に損金に算入されない」ってどういう意味?という方が多いのではないでしょうか。

 

機関投資家の方々であれば財務分析上使うデータなのかもしれませんが、これが投資判断に具体的にどう影響するのかは正直わかりません。

その他のデータと併せて判断するのかもしれませんが・・・

 

同じように退職給付の注記もそんなに意味があるとは思えませんでした。

原則法、簡便法合わせて細かく注記し過ぎなんじゃ?と思いつつ監査の作業をやっていました。

 

その他の注記事項も細かすぎると思われるものが結構あります。

注記については会計監査人の監査範囲であり、いわば飯の種です。

注記事項が増えれば増えるほど監査の工数がかかることになり、監査報酬に影響します。

そのため、会計監査人の本音としては注記が減る(監査対象が減る)のは反対のはずです。

 

実際に有報を利用して投資判断を行ってる人たちに、どの情報が重宝しているかアンケートをとってみたら面白いのではないでしょうか。

会計監査の対象外である有報の経理の状況以前の情報、そして会計監査の対象である経理の状況以降の情報(一部は対象外)、どの情報が役にたっているのか知りたくないですか?

 

一般に国際会計基準を採用すると有報の注記事項が増えると言われています。

今後、国際会計基準を採用する企業が増えると思われますが、その注記が本当に投資家の判断に資する情報なのかどうか、もう一度よく考える必要があるのではないかと思う今日この頃です。

 

あー、会計士のお偉い先生方に怒られそうなことを書いてしまいました・・・